【水田竜馬のBlog】中国進出の方法②

弁護士の水田です。中国会社法シリーズ。コンサルさん等のブログは実務的な流れを説明するケースが多いのですが、こちらでは法の体系に基づくご説明をさせて頂こうと思います。

場当たり的な処理でもできてしまうのが法律事務の怖いところですが、やはり基礎的な理解あっての処理が大事だと思います。

さておき。

中国の会社の名称は、日本のそれとは異なります(まぁ言語が違いますので当たり前といえば当たり前ですが)。

中国法上の会社には大きく分けて、「有限責任公司(有限責任会社)」と「股分有限公司(株式有限会社)」という2つの形態があります。

形式的に制度を比較してみれば、前者は従前の日本の「有限会社」(平成18年で有限会社法が廃止され、法律的には存在しなくなりました。もっとも、社名変更は強制されませんでしたので、今でも○○有限会社というところはありますね。)と、後者は日本の「株式会社」とそれぞれ類似しています。

もっとも、中国の株式有限会社は、立法意図に比べて中小企業が多い日本の株式会社と異なり、大規模な企業がほとんどです(なお、2013年の中国会社法改正で、有限責任会社3万元、株式有限会社500万元という登録資本の最低限度額規制は撤廃されました。)。

類似しているとはいえども、日本法との違いに驚くことも多く、中国の実務家と話をするときも本当に基礎的なレベルで法律の常識が異なることがあります。

例えば、日本では株式譲渡にあたって法務局の登記は必要ありませんが、中国では有限責任会社の持分を譲渡する場合、必ず工商局で登記をしなければなりません。

また、中国の会社法では、株式有限会社における株式の譲渡について「株主がその株式を譲渡するときは、法によって設立された証券取引所で行うか、又は国務院の定めるその他の方式により行わなければならない(股东转让其股份,应当在依法设立的证券交易场所进行或者按照国务院规定的其他方式进行。)」として、譲渡の場所が法律上制限されています(公司法139条)。

ちなみに、日本の東証(東京証券取引所)などに相当する「証券取引所」は現在、香港、上海、深センの三か所です。また、「国務院の定めるその他の方式」というのは、「株式譲渡代理システム(股份代办转让系统)」を言い、三板市場と呼ばれる店頭株式市場のことです(なお、三板市場は「(旧)三板」とハイテク企業向けの「新三板」の2つですが、国務院は2013年12月14日に「全国中小企業株式譲渡システムに関する問題の決定」を発表し、「新三板」の対象企業の範囲をハイテク企業のみならず全業種に広げました。)。

日本の企業が中国で会社を設立する場合も、上述した「有限責任会社」又は「株式有限会社」のいずれかの形を採ることになりますが、日本を含む外国資本の企業は会社法とは別の規制を受けることになります。次回は、三資企業規制など外資企業の規制に触れながら、日本企業の海外現地拠点の展開方法についてご説明させて頂きたいと思います(と前回も言っておきながら、話したいことが多すぎて総論に留まるの巻)。