医療事件

病院で治療を受けて死亡や後遺症が残った等の重大な結果が生じてしまうことは,大変不幸で悲しいことです。医療の不確実性ゆえ,どれだけ精一杯の治療を尽くしても100%完全な治療はできません。しかし,その一方で,医師が一定の水準に達しない治療を行っていた場合には,その医師や医療機関に対する法的責任を追及できる可能性があります。

医療事件においては,医師や医療機関の法的責任を追及するためには,一定の水準に達しない医療を行ったこと(過失の問題),過失によって死亡等の重大な結果が発生したこと(因果関係の問題)の立証に成功することという,重たいハードルが患者側には課せられております。

それらの判断のためには法律のみならず医療についての専門的な知識が不可欠であり,カルテの理解や医学文献の読み込み,更には文献では分からない点についてはその分野を専門とする医師の意見を聞く必要もあります。

それゆえ,医療事件は,弁護士が扱う事件のうち特に専門性が必要とされ難易度が高いとされており,弁護士であれば誰でも対応できるというものではありません。日本弁護士連合会が2010年に行った弁護士へのアンケート調査でも,「知的・技能的難易度が高いと思う分野」として「医療事故(患者側)」が第一位とされています。

当事務所では医療事件に精通した弁護士2名による共同での対応を原則としており,カルテの精査や医学文献の収集・分析,他の医師からその事案について医学的な意見を聞く等して迅速かつ適正な処理をさせていただきます。また,難解な法律用語や医学用語についても,依頼者の方に理解してもらえるよう,できる限り分かりやすく丁寧にご説明いたします。

医療事件の対応をさせていただく弁護士は,日々,医療事件に関する事例の検討や医学文献に目を通す等して医療事件処理にあたって研鑽を積んでおります。当事務所にはレントゲンやCT画像等を確認するためのシャーカステンを常備し,医療知識を調べるためのソフトをパソコンに標準搭載しており,事件の早期かつ適正な処理に役立てております。

「亡くなった人は帰ってこない」「後遺症はもとに戻らない」。確かにその通りです。終わったことは一刻も早く忘れてしまうというのも一つの選択です。しかし,「医療過誤かもしれないがどうすればよいか分からない」とお悩みの方は,一度ご相談だけでもお越しください。医療事件に精通した弁護士が丁寧に対応させていただきます。

医療事件の処理の流れ

当事務所で医療事件をご依頼いただくという場合、基本的に以下のような流れになります。

1.ご相談

まずは、被害発生に至るまでの診療経過をお聞きし、医師等の処置の法的な問題点を検討いたします。

カルテ等の医療記録をまだお持ちでない場合は、2により医療記録を入手することになります。なお、相談の段階では、ご依頼に至らない限り、相談料以外は弁護士費用はかかりません。

2.カルテ等の入手

医療事件において病院や医師への法的責任追及が可能か否かは、カルテ等の医療記録を入手することが不可欠となります。医療記録入手には、大きく分けて、(1)御自身で入手していただく方法と、(2)証拠保全によって入手する方法の2つがあります。

(1)は直接医療機関に対して医療記録の開示を求めるという方法です。これは御自身で可能ですので、弁護士費用をいただくことは基本的にはありません。

(2)は、病院や医師が都合の悪い事実を隠そうとする等不誠実な対応をしておりカルテ等の改ざん・廃棄の危険が想定される場合に、裁判所に対して証拠保全を申し立てるものです。抜き打ち的に病院に赴いて医療記録を保全することができるので、改ざん・廃棄される危険の防止が期待できます。

証拠保全の申立は、専門知識が必要になりますので、弁護士に依頼をしていただくことになるでしょう。

3.調査

カルテ等の医療記録を入手したからといって、ただちに病院や医師に対して損害賠償請求をするわけではありません。医療記録の内容を精査してどのような処置がなされたかを把握した上で、医学文献を調査・検討して、当該病院や医師の処置に問題がなかったかを検討することになります。また、専門家としてご意見をくださる医師の方(協力医)にお願いして面談をしてその医学的知見を教えていただくこともあります。

調査・検討の結果、損害賠償請求は難しいという結論に達する可能性もあります。この場合、調査のみで終了となり、それ以降の訴訟や示談交渉に移行することはありません。

協力医の面談が必要になる場合は面談費用として10~20万円ほど必要になるでしょう。

4.示談交渉

上記3の調査の結果、損害賠償請求が可能となった場合、病院や医師に対して請求をしていくことになります。

いきなり訴訟ではなく、まずは直接病院と直接交渉をしていくことが多いです。交渉をしてもうまくいかない場合,以下に述べる訴訟提起のほか,調停・ADRを用いる方法も考えられます。

5.訴訟提起

大阪地裁では,医療事件を専門的に取り扱う部が存在しており,裁判所も医療事件について理解があります。

費用について

こちらをご参照ください。