【矢倉昌子のBlog】事業再生(2)
1.中小企業金融円滑化法の終了
平成21年12月に中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)が施行され,中小企業が金融機関に対して,返済の猶予(貸付条件の変更,リスケジュール)の申し込みをすれば,金融機関は,ほぼリスケに応じてくれるという状況が続き,それがなければ破綻に至る企業が延命されてきました。この法律は当初23年3月末までの予定でしたが,延長され,今回最後の延長が認められ,25年3月終了となります。
リスケにより,元本返済を猶予してもらっている間に,積極的に経営改善計画を立てて実行し,事業再建のために,収支を改善して利益を生み出す体質に変えることができればいいのですが,円滑化法が終了する来年3月に向けて,これまで先延ばしにされてきた企業の破綻が顕在化するのではないか,といわれています。
2.清算か,再生か
そうなった場合,企業を清算(破産)するか再生を考えるか,再生をするとして,私的整理か法的整理か,という選択肢があります。
私的整理というのは,弁護士等に依頼して再建計画を立て,金融機関等債権者と交渉して,その同意を取り付け,債権額を減額して返済していく方法です。
その場合に,都道府県毎にある「中小企業再生支援協議会」を利用して,金融機関に対する負債のみを整理する,という方法があります。中小企業庁が関与している公の機関ですので,金融機関の同意が得やすいというメリットや,金融機関の負債のみを整理するので,取引先に伝わらないというメリットがあります。
3.私的整理か,法的整理か
私的整理では,再生が難しいという場合には,法的整理(民事再生)を利用することができます。
大会社の場合は,JALや武富士のように,会社更生という手続きを利用しますが,民事再生は,中小の株式会社だけでなく,医療法人,社会福祉法人,個人も利用できます。次のような場合は,民事再生を検討するとよいと思います。
● 会社をつぶしたくない,継続したい
● 代表者を続けたい,ほかにできる人がいない
● 従業員の雇用,取引先を守りたい。
● 事業自体は利益が出ているので,負債が減れば再生できる。
● 大口の金融機関の同意が得られる可能性が高い。
● 債権者の多くの同意を得られる可能性が高い。
4.民事再生の方法
再生の方法としては,収益弁済型(今後の事業の収益で弁済する)と事業譲渡型(スポンサーを見つけて事業を譲渡して,その代金で弁済する)という方法があります。
具体的な手続きについては,次回に・・・・