【伊田 真広のBlog】中国税務について

 はじめまして,弁護士の伊田と申します。若手弁護士の視点から,日々の業務で感じたことをブログにしていきます。今後ともよろしくお願いいたします。

 さて,知識がなければ,人の役に立つどころか,人の迷惑になってしまうのが弁護士の仕事です。したがって,弁護士も日々勉強ですので,各種セミナー等に参加して,見聞を広めることも,大変重要です。 そこで,第1回目のブログでは,私が中国税務に関するセミナーを聞いて印象に残った話をブログにしたいと思います。

 もともと私は学生時代から租税法に興味があり(司法試験の選択科目も租税法で受験しました。),アスカ法律事務所が中国の法律事務所と提携をしていることもあって,中国税務に関するセミナーを聴講しました。

 セミナーでは,実際に中国に進出した日本企業が,課税上陥りやすいミスや,中国での外国籍個人優遇政策が実際にどの程度利用されているか等,日本企業が実際に中国進出した場合の実情も知ることができました。

 その中で,課税上陥りやすいミスについて印象に残った話を一つ紹介したいと思います。

  さて,唐突ですが,私は日本国内で働き,日本国内に住んでいます。この場合,税金を納める国はどこでしょうか。

  当然,税金を納めるのは,日本国ということになります。

 しかし,外国で働く日本人,外国に進出した日本企業の課税関係はどうなるのでしょうか。このような国際租税の場面で,重要になるのがPE(恒久的施設)という概念です。 PEがなぜ重要かと言いますと,外国企業の通常の事業による利益に対しては恒久的施設がなければ課税しないという原則,いわゆる「PEなければ課税なし」という原則があるからです。

 シンプルに言えば,日本企業のPEが中国にあれば中国で課税されることになります。 日本企業の中国支店などは,わかりやすいPEの例ですが,どのような場合にPEに該当するかは国によって認定基準も異なり,その判断は簡単ではありません。

 さて,前置きが長くなりましたが,私がセミナーで印象に残った話は,中国でPE(中国では,「常設機構」といいます。)に該当するとの判断がされた場合に,課税所得について, 中国で間違った課税がされることもあるという話でした。

 すなわち,PEに対する課税は,売上に対するものではありません。たとえば,支店の様なPEであれば,益金から損金を差し引いた課税所得に対して課税されます。 一方,セミナーで問題になったのは,コンサルティング役務提供についてPEに該当し,課税された場合の課税所得について,間違った課税がされやすいという話でした。 コンサルティング役務提供では,支店の様なPEとは異なり,財務諸表があるわけでもありませんので,売上に推定利益率(査定利益率)を乗じたものを課税所得として計算します。

 しかし,実際には査定利益率を乗じないまま,売上に対して課税されることがあるらしいのです。特に中国の都市部以外では,税務署の担当者も知識が十分でないこともあるため,特に注意する必要が あるようです。

 売上に課税されるのと,売上に査定利益率を乗じた金額に課税されるのとでは,大きな違いですから,やはり,中国進出においても,知識は重要だと感じたセミナーでした。 アスカ法律事務所では,中国の法律事務所とも提携しておりますので,中国進出のリスクに対しても,適切に対処いたします。いつでもお気軽にご相談ください。