【解決事例】相続人の配偶者が行方不明(外国人)の場合に遺産分割を行ったケース

ポイント: 相続人の中に行方や生死が分からない人がいると、そのままでは遺産分割協議ができません。今回は、亡くなった相続人の配偶者(外国籍)の生死が70年 以上前から分からないというケースで、「不在者財産管理人」という制度を使って遺産分割を成立させた事例をご紹介します。

1.事案概要

遺産分割をしようとしたところ、相続人の一人(Aさん、既に死亡)の配偶者(Bさん)が外国籍の方で、70年以上前に婚姻した記録はあるものの、その後の消息が全く分からない、というご相談をいただきました。

Bさんが今も生きているのであれば、Aさんの相続分を引き継ぐ相続人とし て遺産分割協議に加わってもらう必要があります。逆にBさんが既に亡くな っているのであれば、Bさんの相続人(いれば)が代わりに協議に加わるこ とになります。

しかし、Bさんが生きているのか、亡くなっているのか、亡くなっているとしたらいつなのか、それすら分からない状態でした。

まず、Bさんの所在を確認するため、東京出入国在留管理局長に対して、外国人登録原票(外国籍の方の身分事項等が記録された行政上の記録)について照会を行いました。

しかし、70年以上前のことでもあり、そもそも記録自体が残っていないという回答でした。ここから先は、通常の方法でBさんの所在や生死を調べるすべがないという状況になってしまいました。

2.なぜこのままでは遺産分割ができないのか

遺産分割協議は、相続人全員が参加して合意しなければ成立しません。一 部の相続人を除いた協議は無効です。

Bさんが相続人であるかどうか(つまり生きているかどうか)が分からない以上、そもそも「相続人が誰か」という前提すら確定しません。この状態では、他の相続人だけで遺産分割協議を進めることができないのです。

3.「失踪宣告」は使えるのか

行方不明者について相続関係を確定させる制度として、「失踪宣告」とい う手続きがあります。一定期間生死が分からない人について、家庭裁判所が法律上死亡したものとみなす制度です。

今回のケースでも失踪宣告を利用することは考えられました。しかし、失踪宣告によって死亡したものとみなされたとしても、その後の遺産分割協議に基づく相続登記(不動産の名義変更)が問題なくできるかどうかについは必ずしも明確ではありませんでした。せっかく時間とコストをかけて手続を進めても、最終的に相続登記ができなければ意味がありません。

4.「不在者財産管理人」を活用した解決

そこで今回は、「不在者財産管理人」という制度を利用することにしました。

不在者財産管理人とは、行方不明で自分の財産を管理できない人(不在者)に代わって、家庭裁判所が選んだ管理人がその財産を管理する制度です。

遺産分割協議のように、不在者本人の代わりに法律行為をする必要があ る場面では、家庭裁判所の許可を得たうえで、この管理人が本人に代わって協議に参加することができます。

今回は、Bさんについて不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立て、選任された管理人がBさんの代わりに遺産分割協議に参加する形で、無事に遺産分割協議を成立させることができました。

5.「帰来時弁済型」という工夫

もっとも、Bさんは70年以上消息が分からず、現実的に見て既に亡くなっている可能性が非常に高い状況でした。とはいえ、生きている可能性がゼロとは言い切れない以上、Bさんが本来受け取るべき相続分をどう扱うかという問題が残ります。

そこで、今回採用したのが「帰来時弁済型」という方法です。これは、Bさん(不在者)の取り分については、遺産分割の時点ではひとまず他の相続人が管理・保管しておき、もしBさんが将来帰ってきた場合(所在が判明した場合)にその時点で支払う、という取り決めです。

現実的にBさんの所在が今後判明する可能性はほぼゼロに近いといえますが、この方法をとることで、Bさんの取り分をひとまず確保しつつ、他の相続人の間では遺産分割を先に進めることができました。

6.まとめ

相続人の中に、海外の方や長期間消息不明の方がいる場合、その人の生死や所在が分からないというだけで、遺産分割協議が何年も前に進まなくなってしまうことがあります。

今回のケースでは、

  • 出入国在留管理局への照会でも記録が見つからなかったこと
  • 失踪宣告では相続登記ができるか不透明であったこと

といった事情から、最終的に「不在者財産管理人」の選任という方法を選 び、「帰来時弁済型」の取り決めと組み合わせることで、時間とコストはかかったものの、遺産分割協議を成立させることができました。

相続人の中に外国籍の方や行方不明の方がいる、というだけで遺産分割を諦めてしまう必要はありません。事案に応じた適切な手続きを選ぶことで、解決の道が開けることがあります。お困りの際は、一度弁護士に相談ください。