債権回収手段としての支払督促

取引先が代金の支払をしてくれない場合、支払督促が選択肢になります

1 支払督促とは

事業をしている以上、どうしても一定の頻度で取引先が代金を期限通りに支払ってくれないことがあります。

入金がなければ、資金繰りに影響が出ることもありますし、何度も督促することは本業の時間や労力が削られてしまうので、早期に回収する必要があります。しかし、訴訟を起こすとなるとどうしても時間がかかりますし、またコストも大きくかかってしまうことが懸念されます。

そこで、債権回収の手段として「支払督促」を活用することを検討すべきです。

支払督促の主なメリットは以下の3点です。

①訴訟よりも手間がかからず裁判所への出廷の必要もないので、比較的簡単かつ低コストで申立てができる

②裁判所から文書が送られるので相手方に与える心理的効果が大きい  

③異議が出なければ相手方の財産の差押えが可能となる

実際、私が関与した案件で、何度督促しても支払ってくれなかった取引相手が、支払督促を申し立てて裁判所から文書が送られた途端、全額入金をしてきたというケースもありました。

2 具体的な流れ

支払督促の主な流れは、以下の通りです[1]

①申立人の方で「支払督促申立書」に必要事項を記入して簡易裁判所に提出            ↓
②申立を受理した簡易裁判所の書記官が、支払督促を文書で相手方に送達            ↓
③相手方が支払督促受領後一定期間内異議を申立てない場合、仮執行宣言を申立てることができる。これにより、強制執行が可能
※相手方から異議が出た場合には、民事訴訟に移行

相手方から異議が出た場合には、結局通常の訴訟手続になってしまう点は注意です。

ただ、事実関係や金額について争いがないようなケースでは、支払督促が有効な手段となる可能性があるので、債権回収の手段として検討されるとよいでしょう。

弁護士 上村裕是


[1] 支払督促の流れについては、「政府広報オンライン」のHPでの解説が分かりやすいです(簡易裁判所の「支払督促」手続をご存じですか? | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン (gov-online.go.jp)