【水田竜馬のBlog】中国進出の方法③

今回は、日本の企業が中国で会社を設立する場合の規制についてです。前回、中国の種類は大きく有限責任会社と株式有限会社に分類されるとご説明させて頂きました。これは、日本の企業が中国で現地法人を設立する場合(この法人のことを「外商投資企業」と言います。)も同じです。

もっとも、外商投資企業の場合、会社法以外に設けられた特別法によって独自の規制がされており、この規制面から名称が区分されています(「合弁(ごうべん)」などこちらの区別の方が有名からもしれません。)。

それぞれ、有限責任会社の場合は設立の方法によって三種類に分かれます(これら三種類の会社を総称して「三資企業」と言います。)。また、株式有限会社の場合は、長ったらしい名称の特別規定で設立方法等を規定しています。

 以下、規制法律ごとに簡単にまとめてみました。

 

(有限責任会社の場合)

中外合弁企業法   → 合弁会社(中国企業との共同事業。出資比率で配当率等が決定。)

中外合作経営企業法 → 合作会社(中国企業との共同事業。契約で配当率等が決定。)

外資企業法     → 独資会社(100%外資)

(株式有限会社の場合)

外商投資株式会社設立の若干問題に関する暫定規定 → 外商投資株式会社

 

株式有限会社(外商投資株式会社)はかなり大規模な企業ですので、以下、有限責任会社に絞ってご説明します。

中国で現地法人を作る方法としては、中国企業をパートナーとして共同で現地法人を設立する方法(合弁会社・合作会社)と、日本企業が単独で会社を設立する方法(独資会社)があります。

パートナーとして信頼できる中国企業を見つけるのは難しいですし、また、ノウハウの流出などもあるので、近時は独資企業での設立を希望される企業様が多いです。もっとも、すべての業種について独資会社を設立できるわけではなく、独資企業が設立できるかどうかについては、外商投資ガイドライン及び外商投資産業指導目録(外商投資リスト)によります。

独資企業として参入できない事業や、中国企業の販路等を利用するためには、中国企業とパートナーを組んで法人を設立することになりますが、これには合弁会社と合作会社という2種類があります。合弁会社は出資比率に応じて収益を分配すると規定されているのに対し、合作会社においては合作会社の出資者が協議して決めることができるとされています。

合作企業は、出資比率に縛られないということでフレキシブルな形態であり、投下資本を抑えて中国進出したいという企業などに利用されてましたが、近時はあまり利用されていないと聞いています。やはり出資したとおりに収益を配分する、という合弁の形がシンプルで日中双方の理解も得られやすいのでしょう。合弁の場合でも日本側が知的財産を出資するなど現金以外の方法でも出資を行えますしね(2013年の中国会社法改正では現物出資を行う際の貨幣出資割合の制限(30%)も撤廃されました)。

なお、中国会社法上、「外商投資による有限責任会社及び株式会社には本法を適用する。外商投資に関する法律に別途規定がある場合はその規定を適用する。(外商投资的有限责任公司和股份有限公司适用本法;有关外商投资的法律另有规定的,适用其规定。)」として、外商投資企業にも原則として会社法が適用される旨が規定されています。

会社法と中外合弁企業法など独自の規制法との関係は「一般法と特別法」と言って、特別法に規定がある事項については特別法が優先し、特別法に規定がない場合は一般法が妥当することになります。というわけで、昨年、中国の会社法が大きく改正されましたが、当然、この改正は外商投資企業へも影響があるということです。これらの外商投資企業に対する影響についてはまたあらためてご説明させて頂きたいと思います。