【伊田 真広のBlog】民事と刑事の判決書について
弁護士の仕事をしていると,ふと事務的な事柄で疑問に思うことがあります。
例えば,民事事件と刑事事件の判決書について,民事事件の判決書は,判決が出ると自動的に裁判所から送られてきますが,刑事事件の場合には自動的に判決書が送られてくることはありません。
それどころか,刑事事件の判決書が欲しい場合には,その事件を担当した弁護士でさえも,自己の費用で判決書の謄本を申請する必要があるのです。
そこで条文を確認してみると,民事訴訟法と刑事訴訟法の判決書に関する規定が全く異なることに気付かされます。
まず,民事訴訟法255条1項によると,「判決書…は,当事者に送達しなければならない。」とあり,同条2項は,「前項に規定する送達は,判決書の正本…によってする。」とあります。したがって,裁判所は判決書の正本を送達しなければならないのです。
一方,刑事訴訟法では,上記のような民事訴訟法の規定に相当する規定はありません。
そして,刑事訴訟法46条では,「被告人その他訴訟関係人は,自己の費用で,裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本の交付を請求することができる。」とあり,判決書の謄本を取得するのも有料なのです。
ちなみに,勾留状などの謄本の交付を請求する場合,刑事訴訟規則74,302,154条が,「謄本の交付を請求することができる。」と規定し,「自己の費用で」との文言がないことからして,無料で勾留状などの謄本の交付を請求できます。
このようなふとした事務的疑問は,今回の様に条文の文言からして説明がつく場合もありますが,特に条文の根拠はないけれども単に裁判実務の運用として,その様な扱いになっているというものもあります。
弁護士である以上,裁判実務の運用を把握することも大切ですが,きちんと法的根拠があるのかを確認することも大切だと思った次第です。