シンガポールの酒類規制

1 はじめに

 シンガポールでお酒を提供するには、ライセンスが必須です(Liquor Control (Supply and Consumption) Act 2015(以下、「法」といいます。)法第4条1項)。

 お酒は、0.5%以上のエタノールを含む飲料等と定義されています(法2条1項)また、提供とは、①お酒の売買や交換、②お酒の売買や交換を申し込んだり合意したりすること、③お酒の売買や交換と関連して、お酒をレストランやバー等で提供したり、発送や配達したりすることを意味します(法2条1項)。

 このブログは、抜粋・要約して簡単に説明するものなので、実際に判断される際には、現地法をご精読してください。

2 ライセンスの種類

 ライセンスのクラスは8種類あり、提供するお酒のタイプ、提供方法、取引時間に応じて自分に合ったライセンスを選ぶ必要があります(Liquor Control (Supply and Consumption) (Liquor Licensing) Regulations 2015(以下、「規則」といいます。)4条1項)。なお、複数のクラスのライセンスを取得することができますが(規則4条2項)、唯一の例外として、2Aまたは2Bの有効なライセンスがある建物では、3Aのクラスのライセンスは取得できません(規則4条3項)。取引時間の延長を申し込むこともできます(規則6条1項)。

 取引時間に違反した場合、1万シンガポールドル以下の罰金を科されます(法6条4項)。

クラス:提供するお酒のタイプ、提供方法:取引時間

1A:許可された建物(※1)で飲むお酒の提供:午前6時~午後11時59分

1B:許可された建物で飲むお酒の提供:午前6時~午後9時59分

2A:許可された建物で飲むビールの提供:午前6時~午後11時59分

2B:許可された建物で飲むビールの提供:ライセンスで規定された時間

3A:許可された建物以外の建物で飲むお酒の小売り(※2)による提供:午前7時~午後10時29分(※4、5)

3B:許可された建物以外の建物で飲むビールの小売りによる提供:午前7時~午後10時29分

4:許可された建物以外の建物で飲むお酒の卸売りによる提供(※3):午前7時~午後10時29分

5:一時的なライセンス

※1

 建物:吹き抜けかどうかにかかわらず、あらゆる家屋、ビル、建造物、あらゆる場所を意味します(法2条1項)。

※2

 小売り:30リットル未満のお酒の提供を意味します(規則第4条5項(a))。

※3

 卸売り:ライセンシーへの提供または30リットル以上のお酒の提供を意味します(規則第4条5項(b))。

※4

 クラス3A、3B、4では、酒類管理区域(Liquor Control (Supply and Consumption) (Declaration of Liquor Control Zones) Order 2015のスケジュールの第1パートに記載されているGeylangエリア、同スケジュールの第2パートに記載されているLittle Indiaエリア)にある許可された建物では、土曜日及び日曜日、祝日及びその前日には、午前7時~午後6時59分までになります(Liquor Control (Supply and Consumption) (Trading Hours) Order 2015第2条)。

※5

 オンラインビジネスのライセンス所持者であれば、オンラインサービスを通じていつでもお酒を注文できます(法29条1項、Liquor Control (Supply and Consumption) (Exemption) Order 2017第4条1項)。

 また、3A、3B、4のクラスでは、共用スペースを除く住居、分譲マンションなど個人所有の建物内のプライベートファンクションルーム、ホテルやカウントリークラブのプライベートルーム、従業員のみが出入りできる事務所施設などの非公共の場所への配達は、取引時間外でもできます(法29条1項、Liquor Control (Supply and Consumption) (Exemption) Order 2017第4条2項)。

3 ライセンスの申込み

 ライセンスの申込み、更新手続、取引時間の延長の申込みは、電子サービスで行います(規則14条1項)。クラス1~4の有効期間の上限は1年、クラス5の有効期間の上限は30日なので(規則5条)、お酒の提供を続けるなら更新が必要になります。ライセンスの申込みや更新にかかる手数料は、以下のとおりです。

クラス1A:1年につき880シンガポールドル

クラス1B:1年につき660シンガポールドル

クラス2A:1年につき460シンガポールドル

クラス2B:1年につき285シンガポールドル

クラス3A、3B、4:1年につき110シンガポールドル

クラス5:1日につき22シンガポールドルまたは7日につき44シンガポールドルのいずれか低い額

 不適切な業者と判断されると、ライセンスの取得や更新ができません(法8条2項)。不適切な業者の基準や必要条件は、http://www.police.gov.sg/licenceをご参照ください(法8条3項、規則第3条)。

 また、ライセンスの申込時または更新時に重大な事項について誤った情報を提示したり、ライセンスの規制や条件に違反したり、不適切な業者と判断されたりすると、ライセンスを取り消されたり、6か月を超えない期間停止されたりすることがあり得ます(法9条1項)。

 そのため、事業の継続のためには、ライセンスの規制や条件を遵守することが重要になります。

3 その他の規制

⑴ 許可された建物の譲渡や賃貸、ライセンスが認められた事業の譲渡はできません(規則8条1項)。

⑵ ライセンスに基づき提供されるお酒を、許可された建物以外で保管することはできません(規則9条1項)。

⑶ 17歳未満等のウェイトレスは、許可された建物で雇うことはできません(規則10条1項)。

⑷ 許可された建物において、酔いつぶれていると知っているまたは知り得た人や、18歳未満の人にお酒を提供することはできません(規則11条1項)。万が一18歳未満の人にお酒を提供してしまった場合に備えて、違反が起こる可能性とのバランスを考慮し、お酒を提供した人が18歳以上であることを確認するあらゆる合理的な段階を踏んでおく必要があります(規則11条6項)。