【上村裕是のBlog】動産売買先取特権の重要性

 商品を売って代金は売掛としたのに,売掛先からは支払期限が過ぎても全く支払がない・・・。

 このような場合には相手に対して訴訟を提起して勝訴判決を得て相手の財産に強制執行を行い債権回収するというのが一つの正攻法です。しかし,これでは回収までに相当な費用と時間がかかってしまい,回収に行きつく前に相手が倒産してしまう危険があります。

 そこで動産売買先取特権の行使が検討されるべきです。

    動産売買先取特権とは,動産の売買について売主に認められる担保権です。

 この権利を行使すると,買主がこちらの売り渡した商品を保持している場合にはその商品に対して差押えて競売にかけることで売掛金を回収することが可能になります。また,買主が更に別の第三者に商品を転売していた場合にはその転売の売買代金債権を差し押さえることで売掛金を回収することができます。

 ①担保権なので買主が倒産した場合でも他の一般債権者に優先して債権回収できる点(本来であれば,取引先が倒産すると新たに強制執行等による回収はできません),また,②いきなり差押えを行うことが可能である点(本来であればまず訴訟を提起して判決を得てからでないと強制執行はできません)が大きなメリットです。

 この権利を行使するためには原則として動産売買先取特権の存在を証明する書類(当方が主張する売掛金の発生を示す書類)を裁判所に提出する必要があります。そこで,スムーズに動産売買先取特権を行使できるよう,売買契約書や納品書・発注書等を作成することはもちろん,これらの書類には商品の型番や数量等を明記する等の工夫をしておくとよいでしょう。

  動産売買先取特権は常に万能というわけではありませんが,ときには絶大な威力を発揮します。動産の売掛金債権の回収においては,常にこの担保権の行使を検討しておくべきです。