診療ガイドラインについての講演会

平成30年1月29日、大阪弁護士会医療委員会と大阪地方裁判所医事部との懇談会に参加しました。今年のテーマは「診療ガイドライン」で、ガイドラインに精通されている2名の医師による講演でした。

医療訴訟において、診療ガイドラインは医師や医療機関の過失を立証するための有力な証拠であり、ガイドラインが存在する診療科においてガイドラインが証拠提出されることが常態化しています。患者側がガイドラインに従わなかったので過失があるというために提出することもあれば、逆に、医療機関側から、ガイドラインに従った処置をしたので過失がないという立証のために提出されることもあります。

ただ、ガイドラインの制定過程や位置づけ、医療現場でどのように利用されているかという実態については十分理解ができていませんでした。今回の講演ではこのあたりの部分を詳細にお話しいただき、大変参考になりました。

今回の講演では、ガイドラインは医師を拘束する文書というものではなく、患者と医療者の対話のツールとして位置付けることが大事というお話がありました。ガイドラインはあくまで一般論を記載しているものにすぎないので、一般論を尊重しつつも個々の患者の特性も十分考慮した上で、患者との十分な対話により最適と考えられる医療を実施すべきことが必要という話は、大変印象的でした。

また、診療ガイドラインが策定されてはいるものの、実際の医療現場では必ずしもガイドラインが推奨する術式が用いられているわけではないという話もあり、現場の状況を無視してガイドラインを過度に重視することの危険性を改めて感じました。

訴訟においてガイドラインが重要な証拠であることに変わりはないでしょうが、患者側においては、表面的にガイドラインに基づく主張をするのではなく、当該ガイドラインが想定する場面が本件患者にも妥当するのか、医師がガイドラインに基づいた処置をしなかったことに合理的な理由があるのか等を詳細に検討しなければならないと思いました。